大判例

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仙台高等裁判所 昭和29年(う)617号 判決

次に、職権を以て調査するに、原判決は「被告人が政府の免許を受けないのに、昭和二十六年十一月十四日頃肩書自宅で、容積約四斗三升入桶計十三本に桶一本当りそれぞれ米、米麹、水を原料として仕込み、醗酵させて同月二十六日頃清酒醪約四石五斗三升六合並に清酒約二斗七升を製造した」との起訴事実に対し、「被告人は政府の免許を受けないで、昭和二十六年十一月十四日頃青森市大野字長島の当時の住居で、四斗桶十三本にそれぞれ米、米麹、水を原料として仕込み、醗酵させてこれを瀘過し、同月二十六日頃清酒約二斗七升を製造した」事実を認定し、清酒醪四石五斗三升六合については何等の判断もしていない(原審が収税官吏差押にかかる右清酒醪四石五斗三升六合を没収している点からみてこの部分を無罪と認めたものではないと推論する余地がないでもない)。ところで、本件起訴は清酒醪約四石五斗三升六合の密造と清酒約二斗七升の密造とを包括一罪としてなされたものと認むべきであるから、その一部につき判決すれば当然その全部に効力が及ぶわけであり、従つて審判の請求を受けた事件について判決しない場合に当らないが、原判決挙示の証拠を総合すると、被告人は原判示清酒約二斗七升のみならず、清酒醪約四石五斗三升六合も密造した事実が明かであるから、原判決が右包括一罪中の一行為たる清酒醪密造の事実につき判断しなかつたことは結局事実の誤認をなしたものであり、しかも密造した清酒醪が相当多量であることに鑑み、その誤認が判決に影響を及ぼすことが明かであるといわねばならない。そして、原判決は右事実と原判示その余の事実とを併合罪として一個の刑を科しているのであるから、原判決中有罪部分は全部破棄を免れない。

(裁判長裁判官 鈴木禎次郎 裁判官 蓮見重治 裁判官 細野幸雄)

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